2011/02/23

ふたりでめざす登山1万回



~認知症抱える夫婦の記録~ NHKおおさか放送局:関西特集

8年前に認知症を発症した奥様を連れ、金剛山への登山1万回を目指す70代のご夫婦
そのドキュメンタリーは、実名で、二人の生活をありのまま記録していた
ご主人は、若い頃事業に失敗し、奥様にたいへんな苦労をかけたと・・・
抑えられない感情、薄れ行く記憶、徘徊してはご近所のポストを荒らす
そんな、重度は二番目に重い症状の奥様の介護を独りで続けるのは
”償い”の想いもこめられているのだろう

二人で1万回
その数字に何の意味があるのだろうか?
症状が悪化する奥様を連れ、毎日のように金剛山を歩く
知り合いに会えば、~さんやで、また会ぉたな、とその度に奥様に話しかける
奥様が歩き飽きたら、童謡を歌ってあげる
汗をふいてあげる、お茶を飲ませてあげる、ベンチに優しく座らせる
献身的なんて言葉では表現出来ないほどの介助ぶりが生々しい

そんなお二人は、この冬、数十年ぶりの大雪が降り積もる中も金剛山を歩く
手に手をとって、いつものように歩く
そして、ついに恐れていたことが起こる
千早本道の凍て付いた階段を奥様の手を引き、歩いてるうちに
疲れたのだろうか、奥様の感情が破裂して、大声と共にご主人に杖を投げ付けて
山頂を目前に下山し始める・・・それでもご主人は怒らない
奥様の手をとって語りかける

節子、手を繋ごうよ
節子の手は暖かいね
節子と手を繋ぐのが僕は大好きなんだよ
節子と手を繋いでると僕の手も暖かくなるんだよ
節子、手を繋いでくれてありがとうね

何があっても笑っている、何があっても名前を呼んで語りかけ、何があっても繋いだ手を離さない
そして、また歩き始める


二人で1万回
その目標に何の意味があるのだろうか?
それだけ歩いたら、お二人に何かあるのだろうか?
ドキュメンタリーを見ながら考えていた
答えは、何も無いのだろう、きっとただの毎日の繰り返しだけだろう
でも、日々進行する病に逆らって、1万回歩くその日まで
二人で、普通の毎日を普通に過ごしたい、きっとそれだけだろう
・・・いや、それで充分なんだろう

だから、お二人併せて1万回目
その日は、ゆっくりと訪れて欲しい
いつものように手を繋いで、気付いたら山頂で
あぁ、今日も歩けて良かったな
なんて、そんな1万回目であって欲しい
零れ落ちる涙を拭いもせず、モニターの前で、そんなことを想っていた


3 件のコメント:

  1. のん通信兵2011年2月25日 19:03

    用事しながらなんでちゃんと見てませんが、スロトレさんの文章を読むだけで泣けてきます。お互い、手を繋いでゆっくり年を取り、ゆっくり時間を重ねられる夫婦になりたいですね。中島みゆきの「ホームにて」聴いてから、ずっと頭に回ってます。私は最近では「糸」、昔は「夜曲」が好きでした。

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  2. あっ、変な書き方しちゃった。
    TV放映は流していたけど、
    バタバタしてちゃんと見ていな
    かったってことで・・・。
    ブログはちゃんと読んでます。

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  3. >のんさま

    中島みゆきさん
    ロック小僧だったのですが・・・ある女性との
    想い出がつまったシンガーでして、何曲かは思い入れが
    あるのです。糸、聞いてみました、いい唄ですね
    こんな曲が沁みるようになると
    あぁオレもオヤジだな、なんてw( ̄ー ̄)

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