sanctuary オレの聖域

実は子供の頃オレの夢は･･･笑わないで欲しい
真面目に考えてたのだ、オレの夢は図書司書になることだった
それっくらい本が好きだった、小学生の頃から活字中毒症だった
ノリの合わない遊びをするくらいなら、図書室で本に囲まれてた方が好きだった
岩崎のＳＦ世界の名作全集が置いてある棚の前がオレの特等席だった
アシモフ”こわれたロボット”　ヴェルヌ”海底二万里”コナンドイル”ロストワールド”
･･･ＳＦが好きだった、挿絵ひとつに胸をときめかせた
和田誠の挿絵から手に取った星新一のショート集は図書室にあったものを３周ほど読んだ

毎年の秋の読書感想文コンクールでは何度も賞をもらってた
中学生の夏休、その半分は図書館で過ごした
興味のある小説を読み尽くすと劇画に手を出し、手塚治虫の”火の鳥”にハマった
高校生になると、ギター、バイク、女の娘、興味は反れてったけど
先輩に勧められて読んだ村上龍の”コインロッカー・ベイビーズ”にどっぷり
そして、再び活字中毒、それも重度の症状が発症して以来、今なお病状は変らない

　　　
そんな育ち方をしたオレにとって、図書館は聖なる場所だ
図書館は、ひっそりとしてなければならない
ちょっと黴臭く、埃っぽくもあり、それでいて、しんとした空気
できれば大きな窓があればいい、白いレースのカーテンがあって
そこからプラタナスが並ぶ庭が望めれば最高だ、いや、理由なんてない
きっと中学生の頃通った市立図書館？その記憶、原風景だろうか･･･。
岩井俊二が自作の小説を映画化した”ラブ・レター”全国の子女を涙させたあの映画
今でも印章に残ってるシーンがあって、それは何度も登場する学校の図書室のシーン
中でも、主人公の一人である少年が、窓際で風に揺れるカーテンに見え隠れするところ
もう一人の主人公の少女が、背伸びして棚の上の本を取り損ねるところ
なんでもないシーンに、あぁ岩井俊二、図書室好きだったんだろうなぁ、って
あの揺れるカーテンに、自分が少年だった頃を思い出すなんて、これも海馬のどこか
深い深い場所に刻まれた遠い記憶なんだろうか・・・
なんて、窓ひとつで、これだけ語れるほど、図書館はオレの聖域なのだ
　　
だから、お願いだ
オレの聖域を汚さないでくれ
自分のバックから鳴り響く携帯の音に気付かないまま歩き回るオバさま
事情は知らないが大声で受付にクレームするジィさん
ソファ席でクモ膜下出血寸前みたいな酒臭い大イビキのオヤジ
シャカシャカ、盛大に音漏れするイアホンの、ミニスカなお姉さん（いや、ミニスカはいいけれど♪）
鬼ごっこに夢中なワルガキ兄弟たち
『ほら、あのオジさん怖い顔してるでしょ、静かにしなさい』なんて叫ぶバカ母
オレが怖いから？理由が違うでしょ？ここは静かにしてる場所なんだよ、バカ母さん
　　　
あぁオレの聖域
オレに司書の資格があれば、この受付に座っていられたら
こいつら全員、図書カードなんて即刻没収
そして聖域から永久追放の刑だ
やっぱ、道を誤ったよなぁ･･･よし、アレだ、今からでも遅くない
勉強しなおして図書司書へ転職しょ
決めた！

と、きっと２８回目くらいの”ムダな”決心をした日曜の朝であった
ってか、遅いよね今さら

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