2011/05/30

優しかったお母さんは私を誘拐した人でした -八日目の蝉-

2月、まだ寒い品川駅で手にした文庫本は新大阪までノンストップで読んだ
八日目の蝉
2作しか読んでないけれど、角田光代は凄い小説を書いたものだ、と感心した
その小説が映画になると知って、観たくないけど、観てしまうかな?と予感していた

が、その前にNHK-BSでドラマ化もされてて再放映を偶然観てしまった
それが何ともよく出来ていて入り込んでしまった、特に主演の壇れいが素晴らしかった
そして、やはり観てしまった劇場版 八日目の蝉

 

原作、NHK版、そして本作と、頭の中で比べてしまう自分がいて
きっと集中できないだろうな、なんて思ってたのは間違い
若いけれど、しっかりと演技を見せてくれる井上真央扮する薫
その薫の現在(事件後)の視点を中心として、過去(事件)をクロスさせながら
巧みに展開する進行はストーリーに自然と入り込めてしまう
そして、極め付けは、恐ろしいほどの”女の凄み”、神々しいばかりの”母の慈しみ”を感じさせる永作博美の演技だ



誘拐してほどなく、ホテルで泣き止まない薫
なす術も無く呆然としていた永作博美、突然胸を肌けて薫を押し付ける
出るはずも無い母乳で慰めようとする、この原作には無いシーンを観た瞬間感じた
この作品、この主人公は永作博美のために用意されたんだろうな、と
そんな偶然と必然が重なるモノっていつの時代にも、どんな世界にもあって
きっと今回はそれだったろうな、と。

 

そう信じ込まされるほどの演技は続く、クライマックス、逮捕が近づく予感の中
笑顔で駆ける薫を永作博美が追いかけるシーン
”もう、もう追いつけなくなったよ薫” と崩れ落ちそうな泣き笑い顔
そして、そして写真館での撮影シーン、そのシャッターを押した瞬間の表情
あの顔は忘れられない、きっと日本映画史上に残るショットになるだろう
映画の公式サイトによると、何とあの写真撮影シーンは薫役の子がグズったため
一日かけて何度も撮ったと・・・
信じられない、それがあの一番素晴らしいショットとして作品になるなんて


 
 でも、その写真撮影シーン、正直言ってズルい、と思った
原作では思い出に一枚撮るだけだ
NHK版では、誰も取りに来ないまま窓に飾られている設定
それを知ってたから、ここで、このエピソード引っ張って、どうするの?と訝っていた
それが・・・あんな演出はダメだ、オレはあの一瞬で涙腺溶けてなくなったぞ
今思い出しててもウルって来てるぞ・・・。
  
映画を観終わった後も再び思った、角田光代は何て小説を書いたんだろう
悲しみ、憎しみ、慈しみ、美しさ、醜さ、せつなさ、ほろ苦さ、冷酷さ、暖かさ、、
ヒトの全てが詰め込まれてる、そんな映画として出来上がってた
救いは一つ、観終わったあと、不思議と複雑に重なる感情が消え去り
エンドロールに出てくる瀬戸内の海のような
静かな、穏やかな気持ちになったことだ


場内が明るくなって、隣の席の泣き顔を見て、何故かホッとした。
  


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2 件のコメント:

  1. ずるいよ、こんな風に紹介されたら観たくなるやんか~!
    原作も読みたくなるやんか~!!

    ほんま、あんたは罪作りな方やなぁ・・・・・・・

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  2. おやじさん

    あのね、原作もいいけど
    映画の方お薦めしますよ、もうね号泣です
    泣かせよう、泣かせます的なニオイは無いのですが。
    あ、ちなみにNHK-BS再放送、今夜(日付は
    明日)あるはずですよ

    返信削除

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